« ひと夜さに嵐来りて築きたる | トップページ | 砂山の砂に腹這ひ-その2 »

2009年2月16日 (月)

砂山の砂に腹這ひ-その1

     

     砂山の砂に腹這ひ

     初恋の

     いたみを遠くおもひ出づる日

<ルビ> 腹這ひ=はらばひ。

「砂山」という言葉が4ページ左の歌から出はじめ、5ページ左のこの歌までつづいて出て来ます。ここでその「砂山」を見ておきましょう。

20世紀初めの函館の大森浜には砂丘=砂山がありました。海沿いに約1500mにわたって起伏し、幅は最大約375m、高さは最高21~22m。鳥取砂丘の巨大さとは比較になりませんが、それでも歌の舞台にふさわしい大きな砂丘です。砂丘の前に広がる海の青が空の青によって限られるあたりに下北半島が見えます。

(1950年代以降かと思われますが、巨大な量の砂は削られ、運び出され消えてしまいます。おそらく舗装道路や高層建築等々に化けさせられたのでしょう。)

「初恋のいたみ」 日本語本来の「恋」の概念では異性を「好きだ」という気持ちとその肉体に対する欲求とが渾然一体となっています。セックス抜きの「恋」など日本人は夢想もしなかったのです。両者が分離されるのは明治になって西洋から入ってきたキリスト教的恋愛・性愛観の影響に因ります。

「初恋」の詩といえばなんと言っても島崎藤村の「初恋」ですが、その第3連を引いてみます。

  わがこころなきためいきの

  その髪の毛にかかるとき

  たのしき恋の盃を

  君が情に酌みしかな

この少年少女は抱き合っていますね。キリスト教的恋愛観に強く影響されている藤村ですが、その「初恋」には性愛の芽が動いています。

「初恋」の歌といえばなんと言っても石川啄木の掲出歌ですが、この「初恋」は藤村詩の「初恋」をはるかに超えています。

啄木が盛岡中学2年生のとき、近所に住む堀合節子(啄木と同年の生まれで8ヵ月年下)と恋仲になります。そして中学5年(満16歳)の夏ふたりの恋は性愛関係にまで進みます(「恋しき君と共にする三夜」と日記にあります)。

つづきは18日に書きます。

« ひと夜さに嵐来りて築きたる | トップページ | 砂山の砂に腹這ひ-その2 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533861/44066177

この記事へのトラックバック一覧です: 砂山の砂に腹這ひ-その1:

« ひと夜さに嵐来りて築きたる | トップページ | 砂山の砂に腹這ひ-その2 »