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2009年6月17日 (水)

実務には役に立たざるうた人と  その2

     実務には役に立たざるうた人と  その2

だからといってこれがモデルだ、と特定できる人がいるわけではありません。

しかしローマ字日記09年4月7日にこんな記述があります(原文はローマ字)。

・・・・広い編集局の片隅でおじいさんたちと一緒に校正をやって、夕方五時半頃、第一版が校了になると帰る。これが予の生活のための日課(まさに「実務」-近藤注)だ。/ 今日、おじいさんたちは心中の話をした。何という鋭いアイロニイだろう! また、足が冷えて困る話をして、「石川君は、年寄りどもが何を言うやらと思うでしょうね、」と、卑しい、助平らしい顔の木村じいさんが言った。「ハ、ハ、ハ・・・・、」と予は笑った。これもまた立派なアイロニイだ!

校正係が「おじいさんたち」ばかりの係であること、啄木一人が若いことが分かります。そして啄木が佐藤編集長の好意でいわば捨て扶持の形で雇ってもらった事も見えています。

ついでに言うと3月に入社したばかりの啄木はこの4月、5月、6月サボりにサボります。文字通り戦力外でした。「おじいさんたち」はどうしようもない文学青年だと匙を投げていたことでしょう。佐藤編集長が庇護してくれました。「おじいさんたち」の頭の中には「石川=よくサボる」という等式が焼き付いたかも知れません。

その年秋からの啄木はきわめてまじめな勤め人に変身しましたが、その代わり社で二葉亭全集の仕事その他を抱えます。どうも「戦力外」は変わらなかったようです。

さて、1910年(明43)4月5日の日記にこうあります。

木村爺さんから五円かりる。三円は下へ屋賃の残り払ふ。

歌の「我を見る人」が「木村爺さん」とは特定できませんが、モデルの候補としてはまさに格好の人物と言えます。

金策に困った末、貸してくれる人であれば自分をどう思っていようとかまわない、と自分に言い聞かせて借金を申し込むのは切ないことでしょう。

つまりこの歌は、借金する時の切ない心、をうたったものです。

結局2倍の時間を費やしてしまいました。今日の石川啄木伝執筆はなし。

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