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2009年7月12日 (日)

こころよき疲れなるかな

     

     こころよき疲れなるかな

     息もつかず

     仕事をしたる後のこの疲れ

<ルビ> 後=のち。

<解釈> 快い疲れであることよ。息もつかず仕事をした後のこの疲れ。

作歌は石川正雄『定本 石川啄木全歌集』〈河出書房新社、1964年〉)145ページによると1909年4月22日(岩城之徳『啄木全歌評釈』では4月11日作)。このときの形は「こころよきあはれこのつかれ息もつかず仕事をしたる後のこのつかれ」です。

ローマ字日記4月21日によると、それまでの東朝の仕事は12時から校正の仕事をして5時半に第1版が校了になると終わりでした。ところが21日の日記にはこうあります。

Kyô kara Kisha no Jikan-kaisei no tame Dai-ippan no Shimekiri ga hayaku nari, tame ni Dai-nihan no dekiru made iru koto ni natta. Shukin wa 12ji, Hike ha 6ji.

この日から校正の仕事は6時までに延長され、第2版の分もやることになりました。仕事量は相当増えたようです。この日啄木はさすがに疲れたとみえて早く寝ました。そして翌朝(超めずらしくも)6時頃に起き、歌を作りました。そのうちの1首が「こころよきあはれこのつかれ」の歌です。

啄木は校正の仕事を天職だなどとはさらさら思っていませんが、きらいな仕事ではありません。一旦仕事に向かうと非常にはやく、よい仕事をしたようです。そして仕事に集中する時間を楽しんでいます。

「こころよく/我にはたらく仕事あれ」の歌の時にも引きましたが、ここではローマ字で引きましょう。

Sha de wa Kimura, Maekawa no Ryô-rôjin ga yasunda no de Dai-ippan no Kôryô made Tabako mo nomenu Isogashisa.……Yo wa kaette kite Meshi ga sumu to sugu torikakatte Uta wo tsukuri hajimeta. Kono aida kara no Bun to awsete, 12ji goro made kakatte 70 shu ni shite, "莫復問七十首"to Dai-shite kokoro yoku neta.Nani ni kagirazu ichi-nichi Hima naku Shigoto wo shita ato no Kokoromochi wa tatôru mono mo naku tanoshii.Jinsei no Shin no fukai Imi wa kedashi Koko ni aru no darô!

すばらしい「仕事」観です。啄木はこうして掲出歌も「莫復問七十首」の中に編集して、上のローマ字日記を記して眠りに就いたわけですが、掲出歌の意味はここに引いたような意味にまで深められていた、ととってよいでしょう。

解釈を啄木文をそのまま引いて以下のように深めておきます。

<解釈その2> 何に限らず一日暇なく仕事をした後の心持はたとうるものもなく楽しい。人生の真の深い意味はけだしここにあるのだろう!

このような仕事のよろこび・労働のよろこびを労働者から剥奪するもの、それが「資本」であると言ったのはマルクスです(労働の疎外)。

34、35ページの見開き4首も味のある組み合わせになっていると思いますが、いかが?

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