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2009年7月 9日 (木)

龍のごとくむなしき空に躍り出でて

     

     龍のごとくむなしき空に躍り出でて

     消えゆく煙

     見れば飽かなく

<ルビ> 龍=りよう。

<語意> むなしき空=なにもない空間。虚空(こくう)

<解釈> 龍のように勢いよく力強く大空に躍り出て、もくもくと登りついに消えてゆく煙を見ていると、飽きることがない。

作歌は1909年(明42)4月22日か23日、「スバル」5月号に「莫復問七十首」のうちの1首として載ります。

下宿・蓋平館3階に住む啄木の眼下のかなたに陸軍の兵器工場(東京砲兵工廠)がありました(今は東京ドーム球場になっています)。その工場には3本の大煙突があり、そこからから吐き出される「煙」です。

人間関係での気苦労の歌、上司への気遣いの歌につづく掲出歌はこれも「転」の歌になっています。

(おそらく真っ黒な)煙が大煙突の口から勢いよく力強く間断なく生み出され、登れるところまで登りつつ、そのまま無限の空間に消えてゆく。小説も書けなければ、金もなく、家族のことも含め八方ふさがりの作者は、あこがれにも似た気持ちで、煙を眺めていたのでしょう。

つまり鬱屈の裏返しの歌になっています。

産業革命完了直後の日本では大煙突とその煙は産業発展のシンボルのようでもありました。

啄木は同じ砲兵工廠の大煙突の煙から、のちの大気汚染を恐ろしいばかりに予言してもいます。

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