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2009年10月 7日 (水)

浅草の凌雲閣のいただきに  その2

     浅草の凌雲閣のいただきに  その2

9月30日(水)の朝日新聞17面は「オピニオン インタビュー」のページで、有名な日本文学研究者ドナルド・キーンさん(87歳)のインタビューが載っています。記事と写真で17面のほとんど4分の3を占める大きなインタビューです。

キーンさんは平安時代から現代までの日記を博捜・研究している方でもありますが、インタビューで石川啄木に触れてこう語っています。

日本文学全体をみると、同じような形式の小説が多いのですが、日記にはそれぞれの個性や人間味が出てきます。たとえば明治時代の日記文学の傑作は石川啄木の『ローマ字日記』だと思います。啄木という個性が実に赤裸々な形で表れています。司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』は、日本で同じような教育を受けていなければ、その面白さはなかなか分からない。しかし、(啄木の)日記は極めて普遍的で、人間ならみな同じようなことを感じることがあります。

(啄木の)は私が補いました。そうしないと文意が通じないからです。またキーンさんの言っておられる事は啄木の短歌にもあてはまること、このブログをご愛読のみなさんにはよくご理会いただけるでしょう。

さて、啄木は下宿に帰ってその「ローマ字日記」を綴ります、たとえばこんな風に。

Hito no inai Tokoro e ikitai to yû Kibô-ga,konogoro,toki-doki Yo no Kokoro wo sosonokasu. Hito no inai Tokoro, sukunaku to mo, Hito no Koe no kikoezu, in, Yo ni sukosi de mo Kwankei no aru yô na koto no kikoezu, tare mo kite Yo wo miru Kidukai no nai Tokoro ni, is-syûkan nari, tô-ka nari, ina, iti-niti demo han-niti demo ii, tatta hitori korogatte ite mitai.

「ローマ字日記」は岩波文庫版で読むことができます。桑原武夫の解説も非常に優れています。読む時は必ずローマ字で読みましょう。漢字かな交じり文に起こしたものを読んでも、読んだことにはなりません。ローマ字で読んでいると、そのうちに啄木が魂に刻むペンの軋りが聞こえてくるでしょう。

小著『国家を撃つ者 石川啄木』(同時代社)の第2章がローマ字日記読み方ガイドになっているのですが、もう新本はありません。興味のある方は図書館で借りるか古本を求めるかしてお読みください。

<解釈>浅草の凌雲閣の展望台で、自分の今とこれからをどうしたらいいのか腕を組んで思いつめたのだった。けれどなんの結論も出なかった。あの日下宿に帰ってから書いたローマ字の長い日記よ。

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