« 何がなしに | トップページ | 垢じみし袷の襟よ »

2010年2月 9日 (火)

遠方に電話の鈴の鳴るごとく

     

     遠方に電話の鈴の鳴るごとく

     今日も耳鳴る

     かなしき日かな

<ルビ>遠方=ゑんぱう。鈴=りん。

<語意>電話の鈴=下記評釈の解説参照。

作歌1910年(明43)10月13日。初出「スバル」「精神修養」の同年12月号。

「こつこつと空地に石をきざむ音 その2」で書いたように、10月13日は心身の緊張・酷使の極限状況にある啄木ですから、(素人判断ですが)耳鳴りが起きても不思議はないでしょう。音は「遠方に電話の鈴の鳴るごとく」ですから、おそらく「リーン」とか「キーン」と鳴っているのでしょう。

当時東京朝日新聞社で使っていたのはソリッドバック磁石式電話機と推定されますが、啄木が掲出歌で「電話」という時の機種はこれと考えてまちがいないでしょう。

この機種は、上方にロボットの目玉みたいなのが2つあって、これが「鈴」。2つの「鈴」のあいだにある玉付きの鉄片が左右に激しく往復して鈴のたたきます。

Google→画像→「ソリッドバック式電話機」で検索してみてください。いい画像がたくさん見られます。

わたくしはソリッドバック磁石式電話機の音を聞かせてもらったことがありますが、昔の黒電話機の音に似ています。

ところでわたくし自身56歳のとき、群馬大学に勤めて間もなく、教授会で耳鳴りが始まりました。耳鳴りの初体験でした。間もなく慢性化して今にいたっています。啄木の言うように「電話の鈴」にそっくりですが、「リリリリリリ」ではなく「リーーーーー」と高く単調に、起きている間中鳴っています。今も鳴っています。この音を意識するたびに「遠方に電話の鈴の鳴るごとく」とは啄木うまく表現したものだなあと、かなしく感心するばかりです。

<解釈>遠くで電話の鈴が鳴るように、今日も耳が鳴っている。(ほとんど言語に絶する忙しさのせいだろう。仕事が一段落するまで直りはすまい。今日も)かなしい日だ!

« 何がなしに | トップページ | 垢じみし袷の襟よ »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533861/47498648

この記事へのトラックバック一覧です: 遠方に電話の鈴の鳴るごとく:

« 何がなしに | トップページ | 垢じみし袷の襟よ »