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2010年7月21日 (水)

何かひとつ不思議を示し  

     

     何かひとつ不思議を示し

     人みなのおどろくひまに

     消えむと思ふ

<言葉>不思議=よく考えても原因・理由のわからないこと。ひま=すき。(消え)む=(消え)たい。

初出『一握の砂』。作歌は1910年(明43)10月4日~16日。

「消えむ」の解釈がカギ。「消える」をこの世から消えるの意味に解する向きもあるが、文脈からすれば「人みな」の前から消える、のである。

「不思議」はどんな種類の「不思議」でもいいらしい。それも「ひとつ」でいいと言う。ともかくその場にいる「ひとみな」があっと驚くようなことであればいい。それでも啄木の言う「不思議」を具体的に知りたいと思うが、不可能だろう。

「消えむと思ふ」は、消えたいものだと思う、の意。「消え」た時何が起こるのか。「ひとみな」が再度おどろくのである。どうやって「消えて」どこへ行くのか。そんなことは当人にも分からないだろう。いたずら好きの啄木だから、「ひとみな」が驚き騒ぐのを透明人間にでもなって見ていたいのではないか。

こう空想する啄木は相変わらず「ひとみな」→いつもと同じ人間関係、の中に暮らしている。「消える」ことはできない。

<訳>なんでもいい何か1つ不思議なことを人々に見せてその場にいるみんなが驚きさわいでいる隙に、姿を消してみたいもんだ。ぼくが消えたので人々は2度驚くだろう。姿を消したぼくはその騒ぎを見て楽しんだりして。(やれやれ、現実のぼくはいつもと同じ人間関係をのがれられないよ。)

次回は掲出歌余談です。

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