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2011年5月 3日 (火)

「我を愛する歌」の研究 5

6-7ページ。
   

       砂山の裾によこたはる流木に
   あたり見まはし<
   物言ひてみる

【解釈】砂山の裾に根もとを打ち上げて、長い幹の半分までを海中に入れたまま、横たわる巨大な流木をみたわたしは、自分の漂泊の半生を重ねてしまい、親しみを感じて話しかけたくなった。人に見られたらヘンに見られるだろうとあたりを見回したがさいわい誰もいない。そこで話しかけてみた。
   

    いのちなき砂のかなしさよ
   さらさらと
   握れば指のあひだより落つ

【解釈】私の内部に渦巻き私を揺り動かす思いや望みは、実現からはほど遠い。ただ時間だけが過ぎ去ってゆく。砂を握ると、砂はいのちなきものゆえに、私のそんな思いにとんじゃくすることなく、砂時計となって、さらさらと、指の間よりすべり落ちてゆく。私の人生が意に満たぬままに刻一刻と過ぎてゆくことを無情にも知らせながら。
   

       しつとりと
   なみだを吸へる砂の玉
   なみだは重きものにしあるかな

【解釈】生きて行くことの苦しさに自殺まで考えたわたし。そのわたしの涙をしっとりと吸ってできた砂の玉。熱くしたたり落ちた涙が突然重さのあるものに変わったのだ。この玉がわたしの苦しみ・悲しみの全重量を表していると思うと、涙はなんと重いものであることよ。
   

       大といふ字を百あまり
   砂に書き
   死ぬことをやめて帰り来れり

【解釈】大きな人間になる、という少年時代からの大志を思い起こして、無量の砂の上に、大という字を百あまり書いてゆくと、いつのまにか自殺衝動が消えてしまった。そして家に帰ってきたのだった。

注解】テキスト6-7ページの脚注・補注参照。

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