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2011年5月28日 (土)

「我を愛する歌」の研究 16

28-29ページ

     この日頃
     ひそかに胸にやどりたる悔あり
     われを笑はしめざり 

【解釈】このところ、ひそかに私の胸にやどった悔いがある。大逆事件の発覚で知ったのだが、命を賭けて国家と対決しようとした人たちがすでにいた。自分の傍観的態度はこの人たちにとって、何という残酷な振る舞いであったことか。この思いが私から笑いをうばっている。

     へつらひを聞けば
     腹立つわがこころ
     あまりに我を知るがかなしき 

【解釈】歌人として評価されるとおべっかに聞こえて腹が立つわが心。歌人としての自分・その自分が作る歌、それらに対する評価や思いの複雑さはこの世で私自身が一番よく知っている。そんなコンプレックスいだくのは悲しいことだ。

     知らぬ家たたき起して
     遁げ来るがおもしろかりし
     昔の恋しさ 

【解釈】盛岡の町で夜おそく、知らない家の戸を叩き家人が起きてくるのを待って、逃げて来るのを楽しんだ少年の日のなつかしさよ。

     非凡なる人のごとくにふるまへる
     後のさびしさは
     何にかたぐへむ 

【解釈】国家とか何とか一切の現実を承認して、そしてその範囲において自分自身の内外の生活を一生懸命に改善しようと、ここ3か月間人々にえらそうに訴えてきたが、どうやらそれは空理空論であった。それに気が付いた今のこのさびしさは何にくらべられようか。

注解】p.28=思想家としての悔い・複雑過剰の自己認識。p.29=悩み知らずの少年時(3首目は起承転結の転に相当する役割)・醒めてしまった自己認識

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