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2011年5月 7日 (土)

「我を愛する歌」の研究 7

10ページ、11ページ。
   

   飄然と家を出でては
   飄然と帰りし癖よ
   友はわらへど

【解釈】夢を追って家を飛び出しては大失敗し、そのたびに父に計り知れない迷惑をかけ、結局は飄然と家に帰ってくるしかなかったわたしの悪い癖。友はあざ笑ったけれど、でも、ああなるほかは無かったのだ。
   

   ふるさとの父の咳する度に斯く
   咳の出づるや<
   病めばはかなし

【解釈】ふるさとの老いた父が咳をするたびに、東京にいるぼくに伝わってこうしてぼくも咳をするのだろうか。父の助けを得られない旅の空で病気になると、心細くてたまらない。

注解】p.10=父の歌。なお、10ページ脚注参照。

11ページ。

(テキストではこのページ右の歌の脚注に「ここから啄木の『心の姿』百態がランダムに配置される」と記したのであった。しかしその後の研究で「ランダム」どころか、見開き2ページ4首〈または各1ページ2首〉に、なんらかの編集上の工夫を用意していることが分かったのである。それを以後【注解】で示して行く。)
   

   わが泣くを少女等きかば
   病犬の
   月に吠ゆるに似たりといふら
む 
【解釈】私の心の中の憤懣、悲しみをそのまま泣くという行為にうつしたならば、私の泣き声を少女等は、狂犬が月に向かって吠えているようだ、と言うことだろう。        
   

   何処やらむかすかに虫のなくごとき
   こころ細さを
   今日もおぼゆる 

【解釈】何処で鳴いているのだろうと思いながら、かすかな虫の音を聞いたことがある。秋の末の今にも絶え入りそうな虫の音だ。あれを聞いたときのような、自分という存在に対する頼りなさを、今日も感じることだ。

注解】p.11=孤独な懊悩・孤独の不安。

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