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2011年6月 8日 (水)

「我を愛する歌」の研究 21

38-39ページ

     死ね死ねと己を怒り
     もだしたる
     心の底の暗きむなしさ 

【解釈】「死ね死ね」と小説を書けないだめな自分を責め立ててみても、その自分を殺すことはできない。結局黙ってしまうしかない。黙った時に心の底にわだかまるのは暗い虚無すなわち絶望。

     けものめく顔あり口をあけたてす
     とのみ見てゐぬ

     人の語るを 
【解釈】目の前に獣のような顔があって口を開けたり閉めたりしていらあ、ということしか考えずに、人がしゃべるのを見ていた。

     親と子と
     はなればなれの心もて静かに対ふ
     気まづきや何ぞ 

【解釈】父と息子が離れ離れの心をいだいて、ものも言わず向かい合う時、気まずい空気が生ずるのはどうしてだろう。

     かの船の
     かの航海の船客の一人にてありき
     死にかねたるは
 
【解釈】(渋民村を「石をもて追はるるごとく」出て来た私は今日ふるさとを失った。もう帰るところがない。傷心の私をやさしく迎え、抱きとめてくれる場所を永遠に失ったのだ。ほんとなら東京に出て文学に打ち込むべきなのに、行く手は内国植民地北海道。どんな生活が待っているのやら心細さは限りがない。ああいっそ黒い海に飛び込んで死んでしまおうか。)あの船の甲板から海をのぞき込みながらそう思っても死ねなかったのは、船客の一人である私だった。

注解】4首共通の主題、場から乖離する心。

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