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2011年7月 2日 (土)

「我を愛する歌」の研究 33

62―63ページ

     ある日のこと
     室の障子をはりかへぬ
     その日はそれにて心なごみき

【解釈】屈託したある日のこと、思い立って部屋の障子を張り替えた。その日はそのおかげで屈託が晴れた。

     かうしては居られずと思ひ
     立ちにしが
     戸外に馬の嘶きしまで

【解釈】空想に耽っていると突然すごい物音がした。大変だ!と思って立ち上がったのだが、表で馬が嘶いたにすぎなかった。

     気ぬけして廊下に立ちぬ
     あららかに扉を推せしに
     すぐ開きしかば

【解釈】気抜けして病院の廊下に立ってしまった。このドアは固いと思い込んで、体重をかけて荒っぽく推したところ、すっと開いてしまったので。

     ぢつとして
     黒はた赤のインク吸ひ
     堅くかわける海綿を見る

【解釈】(このところ小説「我等の一団と彼」の執筆と秋水著の読書に熱中して、この海綿を使うこともなかった。)じっとして、黒と赤のインクを吸い込んでやがてすっかり乾いてしまった海綿を、一連の嵐のような日々を思いながら見ることだ。

注解】4首共通の主題、ある行為の中に映る心の小さなドラマ。

   <ブログをお読みいただくに際してのお願い>

このブログの勘どころは【注解】にあります。いつも【注解】にご注目の上、次の2点を実行してください。

朝日文庫版のテキストに帰って啄木の編集・割付の巧緻を、さらに組版(字体を含む)の妙を味わってください。

【解釈】は【注解】の理解に必要最小限の内容です。【解釈】をほんとうに理解するためには右のマイリストから「石川啄木著『一握の砂』を読む」に行き、「『一握の砂』全歌評釈」の当該歌に当たってください。

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