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2011年7月 8日 (金)

「我を愛する歌」の研究 36

68―69ページ

     夜明けまであそびてくらす場所が欲し
     家をおもへば
     こころ冷たし

【解釈】(母と妻の確執はもう手に負えない。)家に帰らずに夜明けまで遊んで暮らす場所が欲しい。家に帰ることを考えると、心が冷たくなる。

     人みなが家を持つてふかなしみよ
     墓に入るごとく
     かへりて眠る

【解釈】人がみな家庭を持つという制度から生ずるこの悲しみよ。家に帰りたくない。せめて「夜明けまであそびてくらす場所」にゆく金があれば帰らないこともできる。しかし金がないから帰るしかない。思うだけで心が冷たくなる家に、墓に入るような気持ちで帰って、蒲団に潜り込むのだ。

     何かひとつ不思議を示し
     人みなのおどろくひまに
     消えむと思ふ

【解釈】なんでもいい何か1つ不思議なことを人々に見せて、その場にいるみんなが驚きさわいでいる隙に、姿を消してみたいもんだ。ぼくが消えたので人々は2度驚くだろう。姿を消したぼくはその騒ぎを見て楽しんだりして。(やれやれ、現実のぼくはいつもと同じ人間関係をのがれられないよ。)

     人といふ人のこころに
     一人づつ囚人がゐて
     うめくかなしさ

【解釈】なんでもいい何か1つ不思議なことを人々に見せて、その場にいるみんなが驚きさわいでいる隙に、姿を消してみたいもんだ。ぼくが消えたので人々は2度驚くだろう。姿を消したぼくはその騒ぎを見て楽しんだりして。(やれやれ、現実のぼくはいつもと同じ人間関係をのがれられないよ。)

注解】最初の2首は、居どころの無さをうたい、3首目は例の起承転結の「転」に相当する歌で日常の居どころからの脱出願望、4首目は利己の心の居どころの無さをうたう。

   <ブログをお読みいただくに際してのお願い>

このブログの勘どころは【注解】にあります。いつも【注解】にご注目の上、次の2点を実行してください。

朝日文庫版のテキストに帰って啄木の編集・割付の巧緻を、さらに組版(字体を含む)の妙を味わってください。

【解釈】は【注解】の理解に必要最小限の内容です。【解釈】をほんとうに理解するためには右のマイリストから「石川啄木著『一握の砂』を読む」に行き、「『一握の砂』全歌評釈」の当該歌に当たってください。

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