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2011年10月30日 (日)

幻の啄木歌集「仕事の後」 11

散歩から帰って「午前十一時頃まで作った」歌を見てみよう。

初めの2首。

 56、君が名を七度よべばありとある国内の鐘の一時に鳴る

 57、天外に一鳥とべり辛うじて君より遁(のが)れ我は野を走(は)

また「演技過剰型の歌」がはじまった。そして7~9首目。

 62、野にさそひ眠るをまちて南風に君をやかむと火の石をきる

 63、東海の小島の磯の白砂に我泣きぬれて蟹と戯る

 64、青草の床ゆはるかに天空の日の蝕(しよく)を見て我が雲雀(ひばり)病む

先に福島章の分析を引いたが、当の文脈上では「東海の小島」の歌こそが分析の典型的な例として挙げられていたのである。

この歌を作っている時の啄木にあっては、「東海」歌は62や64の歌と同次元なのである。

三枝の「図式化」にはめるなら、「自然体の歌」というよりもむしろ「演技過剰型の歌」に入るだろう。

とは言え、『一握の砂』を代表する歌がここに生まれてしまったのである。すこしこの歌にとどまろう。

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