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2011年10月24日 (月)

幻の啄木歌集「仕事の後」 9

もっとも印象的で奇怪な歌をあと2首。

 13、はてもなき曠野(くわうや)の草のただ中の髑髏(どくろ)を貫(ぬ)きて赤き百合咲く

 16、半身に赤き痣(あざ)して蛇をかむ人を見しより我はかく病む 

21首目には後の名歌が生まれる(「示せし」は2日後「示しし」に推敲)。

 21、頬につたふ涙のごはず一握の砂を示せし人を忘れず

三枝昂之はこの歌をめぐって次のように言う(『啄木――ふるさとの空遠みかも』。
  

 実作者の自分が連作を作るときの現場を重ねていえば、オーバーアクションの連続の中にふっと訪れたコーヒーブレイクの歌、と感じる。

 ……

 ここでこの夜の啄木の歌を少々強引に図式化し、「演技過剰型の歌」と「自然体の歌」と、二分しておこう。みてきた歌の中では21だけが「自然体の歌」である。狂ったように歌に取り憑かれる歌漬けの日々の中で、ときおり訪れるこのような「自然体の歌」、コーヒーブレイクの歌が、やがて啄木の中心的な領域になる。

日記には「興が刻一刻に熾んになつて来て、遂々徹夜」とある。夜明け方の歌になって、こんな歌が生まれる。(「君が」は2日後に「己が」に改められる。)
 51、君が名を仄(ほの)かによびて涙せし十四の春にかへるすべなし
 53、故さとの君が垣根の忍冬(にんどう)の風をわすれて六年(むとせ)経にけり

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