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2011年10月18日 (火)

幻の啄木歌集「仕事の後」 6

上京以来森鷗外宅での観潮楼歌会や与謝野家での新詩社歌会があって、短歌のセンスが刺戟され、戻ってきた啄木にはこれが格好の吐き出し場所となった。

歌人啄木誕生 

さて、6月23日も小説が書けない。
  

 十時に起きて、小雨を犯して紫陽花と白い鉄砲百合を三十銭だけ買つて来た。……花を新らしくした心地はよい。  (日記)
 

この日にやったことも金田一京助とのおしゃべり、手紙書きなど。

「外に貞子さんから今夜是非来てくれといふ葉書が来たが行かなつた」。おそらく貞子の母がいない日なのであろう。葉書に籠めた貞子の願いは見当がつく。

啄木は記す。「恋をするなら、仄かな恋に限る。」そして前述の散文詩「二人連」「祖父」を作り、「一寸出て花瓶を買つて来た」。ちょうどその留守に貞子が来た。まことに「恋をするなら、仄かな恋に限る」?

 百合の花の香の仄かに籠つた室に寝る心安さ! (日記)
 

小説を書けなくなって以来すでに12日、逃避行動にうつつ抜かす啄木だが、今夜は仄かに百合の香につつまれながら「心安」く眠れるのであろうか。

月末も近づいて来た。下宿代を請求される日も近い。

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