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2011年11月16日 (水)

幻の啄木歌集「仕事の後」 19

 103、飄然(へうぜん)と家を出でては飄然と帰りたること既に五度(いつたび)

家を出た時はいつも主に父に迷惑をかけた。

 107、今日切に猶をさなくて故(ふる)さとの寺にありける日を恋ふるかな

幼き日に記憶が退行して行く。

 108、我れ父の怒りをうけて声高く父を罵り泣ける日思ふ

 109、母われをうたず罪なき妹をうちて懲せし日もありしかな

どの歌もどの歌も佳い歌だ。奇怪でも異様でもない。真実が最上の言葉で詠まれている。

 111、われ人にとはれし時にふと母の齢(とし)を忘れて涙ぐみにき

 112、母よ母このひとり児は今も猶乳の味知れり餓(う)ゑて寝る時

 114、我が母は今日も我より送るべき為替を待ちて門(かど)に立つらむ

母に送るべき金が有ったって、百合の花と足袋と香油と青磁の花瓶と銀台の洋燈を買ったくせに。

でも114のように思っているのも啄木なのだ。母に妻に金を送る時は印税がどかんと入った時なのだろう。

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