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2011年12月18日 (日)

幻の啄木歌集「仕事の後」 35

この明治42年1月と4月に作られた歌々から啄木が「仕事の後」に選んだと推定されるものを集めたのが「明治四十二年一月・四月」の章である。

1月の分6首は明治41年秋の歌の情調を曳いている。すべて題詠である。

この章の歌で重要なのは、4月22日、23日の分である。

日記にあるように作りたくて作ったのではなかったが、天性の歌人はつい興に乗ってしまった。「ローマ字日記」の時期の最初の半月における自分の心の姿のいくつかをうたってしまったのである。

この時期も苦し紛れに自殺や死を思うことしきりであったが、それが「森の奥より銃声」「いたく錆しピストル」「『さばかりの事に死ぬるや』」「よく笑ふ若き男の死にたらば」「こそこその話声が」などの歌になった。

小説は書けない、下宿代は払えない、居場所がない。その心の姿が「何となく汽車に」「空家に入り」等の歌である。

それ以外にも「ローマ字日記」中の記述と符合する歌がある。「快きあはれこの疲れ」「尋常の戯けならむや」「不覚にも婚期を過ぎし妹」の歌など。

このように実生活における日常の自己の心の姿をうたうことをやってしまったのである。

これが『一握の砂』最初の章「我を愛する歌」の源流となる。

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