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2012年1月10日 (火)

幻の啄木歌集「仕事の後」 43 (啄木短歌の誕生)

啄木調短歌の誕生 

3月1日、文芸短歌雑誌「創作」が創刊された。若山牧水が中心で、前田夕暮らが編集に参加した。短歌作品が圧倒的に多い。

短歌に焦点を当てて見るなら、「スバル」は新詩社的・耽美派的な短歌の雑誌であり、「創作」は自然主義的な短歌雑誌であると言えよう。新詩社・耽美派に批判的になり、自然主義に接近していた啄木がこの雑誌に強い関心を抱くのは必然的であった。

分けても当時自然主義的短歌を作って注目を集め始めた前田夕暮に関心を示した。

次に見るのはこの創刊号に載せた前田夕暮「卓上語」の一節である。

  私は言ふところの歌人でないかも知れぬ。けれども自分は「人間」であるといふことに些かの疑念も挿んでゐない。自分は何時も唯「人間」で沢山だ、満足して居る。平凡でもよい、何でもよい。吾等は世上有り触れた極めて通常なる人である。此世間並の人が、世間並の人から受けた印象、乃至は吾等の周囲の自然から受けた心持を、唯正直に表白する。その表白する為めに便宜として私は短歌を選んだまでゞある。

「弓町より」との共通性に着目されたい。一見したところでは、啄木が詩について言ったことを夕暮がそのまま歌について言っているかのようである。啄木は自分の詩論と同様の見地から現実に短歌を作っている先行者を見いだしたのである。ほとんど衝撃的だったであろう。(「弓町より」の夕暮への影響ということも考えられる。)

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