« 石川啄木伝 東京編 13 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 15 »

2012年10月14日 (日)

石川啄木伝 東京編 14

 かくて「予の閲歴とは無関係」の少女を主人公に「天鵞絨」を起稿した。「これは田舎から逃げて東京に出て、三日女中をして帰る女の事をかくのだ。」
 晦日なのに下宿代は払えない。下宿代を払わない石川、女を呼び込んで情交する石川、女や友人が来れば食事を出させる石川、朝寝坊の石川、自分でもって行けばいいものを下の部屋の友人に手紙を持って行かせる人使いの荒い石川……。
 とんだ下宿人を金田一さんは紹介したものだ。赤心館の主人夫妻も女中達もあきれて持てあまして相当怒り始めているだろう。
6月1日、親切な金田一はまた中公の滝田の所へ行ってくれる。金田一がこんなに尽くしてくれるのは啄木が下宿代を払えるようにとの友情からだ。啄木は「天鵞絨」を快調に書いている。
3日「病院の窓」と「母」が中公から帰ってきた、「無事に!!」。
4日「天鵞絨」93枚脱稿。「八時過ぎ“病院の窓”と“天鵞絨”持つてつて鴎外先生の留守宅に置いて来た。」そして森鴎外に宛てて手紙を書く。かつて野口米次郎や姉崎嘲風に書いた時と同様相手の同情を乞う手紙だ。あの頃より悪いのは根拠のない自惚れである。
こう追伸する。
 書いてゐて飯が食へるものなら、私はいくらでも書きます。書き初めさへすれば一日に二十枚は屹度書けます。私は私の書くものが習作だといふ事を知つてゐますから、決して自惚れませんが、正直に申上げればこれより拙いのが矢張活字になつてゐるやうです。

« 石川啄木伝 東京編 13 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 15 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533861/55867369

この記事へのトラックバック一覧です: 石川啄木伝 東京編 14:

« 石川啄木伝 東京編 13 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 15 »