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2012年10月28日 (日)

石川啄木伝 東京編 21

 9日、今度は「“二筋の血”といふのを書き出したが、三四枚書いて迷つた」。「刑余の叔父」というのを別に考えたがやはり「二筋の血」の稿を改めて34枚書く。
11日、「女中が来て、先月分の下宿料の催促」。金田一が自分の衣服を質にいれて啄木の下宿代12円を作り、啄木に貸してくれた。啄木もがんばり夜中の2時までかかって「二筋の血」33枚脱稿。
 この小説は2つのエピソード風の物語と物語その後とからなる小品である。
 主人公の檜沢新太郎で、父は渋民村の桶屋兼小作人。この新太と盛岡から転向してきた佐藤藤野のかぞえ8歳同志の幼い恋と藤野の死(一筋の血)で終わる。2つ目の物語は馬に蹴られて血を流した女乞食の死の暗示(もう一筋の血)とその満1歳にもならぬ乳飲み子の悲惨な末路の予感。そして「十幾年」後の新太郎の感慨。
 新太郎の父はひどく貧しい桶屋だが、読書が好きで孝経や十八史略を読む(宝徳寺住職ならいざ知らず、こんな桶屋がいるものか?)。新太郎の小学校の恩師はどんな資産家か知らないが、新太郎を盛岡の高等小学校に行かせてくれる。1895年(明29)4月に渋民村から、盛岡高等小学校に入れてもらえたのは地主金矢光春の長女金矢ノブと宝徳寺の一粒種石川一とのただ2人であった。一禎はそのために総本山への上納金を流用しはじめ、盛岡の親戚のいろいろな援助を総動員したのであった。こうしてようやく高等小学校を卒業したのだが、そんなことは当然の好意としか受け止めていない啄木には、親と周囲の苦労が分からない。だから高島先生が高等小学校を出してくれたなどという気軽な設定ができるのである。この点「天鵞絨」と同様である。作品内の生活感がちぐはぐなのである。独歩と同日の談ではない。

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