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2012年11月 4日 (日)

石川啄木伝 東京編 24

 この日の買い物の1つに洋横罫ノート(21×16.5㌢)がある。啄木は表紙に直径4.8㌢ほどの○を書き、中に「ヒマナ時」と記した。さらに第1ページに「暇ナ時 六月十四日ヨリ」と記した。そしてこの日のことと思われるが8首を作る。うち6首を引こう。
 手に手とる時忘れたる我ありて君に肖ざりし子を思出づ
 われ死なむかく幾度かくりかへしさめたる恋を弄ぶ人
 漂泊の人はかぞへぬ風青き越の峠にあひし少女も
 別るべき明日と見ざりし昨の日に心わかれて中に君みる
 日に三度たづね来し子は我とはぢ苦し死なんといつはりをいふ
 あなくるしむしろ死なむと我にいふ三人のいづれ先に死ぬらむ

 観潮楼や新詩社の歌会が刺激になったのか、歌稿ノートを作ったのである。8首のモチーフは貞子がらみであろう。3首目の「風青き越の峠」は宮城県石巻市牡鹿半島の「風(かざ)(こし)(とうげ)」であるという。とすると、「少女」は4月26日荻浜で言葉を交わした佐藤藤野であろう。「二筋の血」でこの名前がヒロインに宛てられているのをすでに見た。美しい叙情的な歌である。直接的に貞子に関わると見られる他の歌は、その関係にふさわしく叙情性にとぼしい。

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