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2012年11月14日 (水)

石川啄木伝 東京編 29

 6月22日、夕方金田一とすき歩き。この日、小説の代わりに散文詩を初めて作った。「曠野」「白い鳥」「血の海」「火星の芝居」の4編。これも今の場合は逃避の一つの形である。
とはいえ、「火星の芝居」における、「火星」の「劇場」の「花道」の部分など啄木流の奇想はまさに天外のものである。その部分を引いてみよう。
  『……第一劇場からして違ふよ。』
  『一里四方もあるのか?』
  『莫迦
(ばか)な事を言へ。先づ青空を十里四方位の大(おほき)さに(き)つて、それを圧搾して 石にするんだ。石よりも堅くて青くて透徹るよ。』
  『それが何
(なん)だい?』
『それを積み重ねて、高い、高い、無際限に高い壁を築き上げたもんだ、然も二列にだ、壁と壁との間が唯五間
(けん)(ぐらい)しかないが、無際限に高いので、仰ぐと空が一本の銀の糸の様に見える。』
『五間の舞台で芝居がやれるのか?』
『マア聞き給へ。其青い壁が何処まで続いてゐるのか解らない。万里の長城を二重にして、青く塗つた様なもんだね。』
『何処で芝居を演
(や)るんだ?』
『芝居はまだだよ。その壁が詰り花道なんだ。』

 青空が真に美しかった時代の、青空が真に好きな詩人による、天馬空を行くが如き空想である。

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