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2012年11月16日 (金)

石川啄木伝 東京編 30

 しかし、翌日作の「二人連」「祖父」を含めたこれら6編の散文詩について大岡信はこういう。
  
 これらの散文詩に共通する特徴の一つは、ほとんどすべての作品が、話にきっちり結末がついてはいないということである。彼は夢中で書き進めたあと、ぱたりと熱がさめようにその作を打ち切る癖があったらしい。
 
 啄木は京子重態の速達を受けとった5月24日に詩を8編作りそのうちの7編を明星に送った。そのうち「泣くよりも」「嫂」「殺意」「辯疏」が6月号に載った。この4編(どれも小さな詩で、長くて19行、短いものは9行)については同じ大岡信が「機知に富む彼の一面をみごとに示しており、技術的にはまさに手だれの業という感じがする」と評価している。
 つまり今の啄木には小説・散文詩になると、「話にきっちり結末がついて」いないものを書く傾向があるということだ。しかし啄木の評論はいつも明晰かつ論理的である。『あこがれ』の各詩編も構成はしっかりしていた。小説でも翌09年(明42)9月執筆(推定)の「葉書」、10年2月執筆(推定)の「道」では「話にきっちり結末がついて」いる。だから啄木は構成のしっかりした小説が書けないのではない。

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