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2012年11月22日 (木)

石川啄木伝 東京編 33

 小説を書けなくなって以来すでに12日、逃避行動にうつつ抜かす啄木だが、今夜は仄かに百合の香につつまれながら「心安」く眠れるのであろうか。無意識にかかるストレスは相当のものであろう。月末も近づいて来た。下宿代を請求される日も近い。
 天才の不思議が起こる。百合の花の香につつまれて眠るはずだったこの夜、床に入ってから突然興が湧きあがって来た。12時(24日午前0時)ころから「こ志をれ」5首のつづきを作り始める。作り始めはなかなか調子が出なかったらしい。かなりの推敲を経て何とか得たのがつぎの1首だった。
  石一つ落して聞きぬ千仞の谷轟々と一山(いちざん)を撼(ゆ)る 
 この1首に苦労したあと、一瀉千里の勢いを得たらしい。数字はできた順を示す番号。
2、人みなが怖れて覗く鉄門に我平然と馬駆りて入る
3、我とわが愚を罵りて大盃に満を引くなる群を去りえず
4、つと来りつと去る誰ぞと問ふまなし黒き衣着る覆面の人
5、牛頭馬頭のつどひて覗く大香炉中より一縷白き煙す
6、大海にうかべる白き水鳥の一羽は死なず幾千年も
7、我常に思ふ世界の開発の第一日の曙の色
8、西方の山のかなたに億兆の入日埋めし墓あるを思ふ

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