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2012年11月24日 (土)

石川啄木伝 東京編 34

 奇怪で異様な歌々である。啄木はここ10日以上そと見には脳天気に振る舞う様をわれわれは見てきた。内面のストレスは異常な態様であるらしい。小説が書けない苦しみだけがストレスの原因となっているではない。書けない自己の正体の直視からも逃げ回っているために、ストレスは闇雲な形を取る。このストレスを啄木は短歌の奔流として吐き出しはじめたのである。カタルシスが始まったのだ。奇怪な歌々は啄木のストレスの姿と考えると理解しやすい。
 この時の啄木に関する福島章の分析は示唆に富む。「このときの啄木の精神状態」は「意識性や論理の支配する通常の状態ではなく、クリス流にいえば、自我の機能が一時的にかなり弱まって、イメージや象徴のレベルでものを考えていた<創造的退行>の状態にあった……。キュービー流に、心の働きが前意識体系に委ねられていた状態、といってもよい。発達的にいえば幼児の白昼夢の心性に似ている」のだと言う。
 もっとも印象的で奇怪な歌をあと2首。
13、はてもなき曠野の草のただ中の髑髏を貫きて赤き百合咲く
16、半身に赤き痣して蛇をかむ人を見しより我はかく病む

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