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2012年12月18日 (火)

石川啄木伝 東京編 45

 

 目をさますと、凄まじい雨、うつらうつらと枕の上で考へて、死にたくなつた。死といふ外に安けさを求める工夫はない様に思へる。生活の苦痛! それも自分一人ならまだしも、老いたる父は野辺地の居候、老いたる母と妻と子と妹は函館で友人の厄介! ああ、自分は何とすればよいのか。今月もまた下宿料が払へぬではないか?
  To be, or not to be?

 働かないで金が欲しい啄木、働かないで家族を扶養したい啄木がここにいる。
 だが、啄木をこう切り捨ててしまっては不公平だろう。「小説を書く」という仕事はしたいし、しようとしているのだ。丸1ヶ月間は努力したのだ。しかし勤めに出たくない、この一念は容易に抜けることのない一禎「薫陶」の賜物だ。
 ついに下宿代を払えぬまま、7月1日を迎えた啄木は1日くさくさした末に夜、「刑余の叔父」を起稿し6枚ほど書いた。下宿代を稼ぐためだ。先月15日に平野から借りたThree of Themの冒頭部分とそこから想起したFoma Gordyeeffをヒントにこの小説を着想したと推定される 。
 7月2日、「趣味」で正宗白鳥の「世間並」を読んで感心する。そして面会を求める手紙を書く。

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