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2012年12月20日 (木)

石川啄木伝 東京編 46

 7月3日の日記ではめずらしく政治に触れる。
 此夕、時事新報は号外を出して、西園寺首相病気のため、内閣総辞職を報じた。元老の圧迫の結果であらう。
 この総辞職は元老山県有朋による西園寺内閣「毒殺」であったとされる。この「毒殺」は山県を軸としてその一派、明治天皇・西園寺内閣・元老井上馨と松方正義、幸徳秋水を初めとする日本の無政府主義者・社会主義者・在米の無政府主義者等々の錯綜する複雑な動きの一つの帰結であった 。そして赤旗事件から大逆事件に至る道筋のおぞましい一里塚でもあった。西園寺に代わって桂太郎の強権政治が登場した。
 最も政治に無関心に過ごしているこの時期でさえ、啄木はこういう事件のかくれた重大さを、不思議と感知する。
 7月4日、観潮楼歌会。啄木は吉井や白秋の歌から刺激を受けているらしい。「自分の気に入つたのは」として、次の2首を引いている。
  (兼題-人妻)人妻の目をうつくしと思ふ子といつなりしかと独り怖るる (勇)
  (兼題-戸) 春の鳥な鳴きそ鳴きそ赤々ととの面の草に日の入る夕 (白秋)
 7月5日、森川町1番地桜館に住む正宗白鳥を訪問。1時間半ほど話して来た。いずれ白鳥の影響の出た小説も生まれるだろう。この日の日記に浅草の凌雲閣が初めて現れる。
  浅草の十二階から望遠鏡で下を見おろすと、蜘蛛の網の如く細い小路で、男が淫売婦に捉まるところが見えると、金田一君から聞いた。
 とうとう啄木と東京きっての歓楽街・浅草が結びついた。……

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