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2012年12月26日 (水)

石川啄木伝 東京編 49

すき歩き、浮気論、作歌、哄笑、‥‥‥何れも皆、僕の心が一切の現実を暴露した、泣かず笑はざる「真面目」の苦痛から脱出せむとする一種の逃路だ! 而して遂に、その逃路も結局は「女」に行くのだ。女! 女! 金があつたら酒と女!
 小説が書けない自分・「真面目」を直視できない自分がどんな逃げ道を用意しているか自覚している。逃げ道のどん詰まりは貞子だ、芳子だ、つまり「女」だ。
  僕は、若し性欲の圧迫に耐へきれぬ事があつたら、昨年の吉井君の様に芸妓女郎を買ふかも知れぬ。ズツト下つては正宗君と共に淫売屋へ走るかも知れぬ。
 「正宗君」はとんだお手本になりそうだ。皮肉屋の白鳥もこれを知ったら、苦笑するであろう。今の啄木は「逃路」を遁走中で、自分のことしか頭にない。病気の京子も忠実な妻も郁雨に委せきりだ。こうした情報は岩崎を通じて当然郁雨の耳に入る。郁雨自身釧路から同様の内容の手紙をもらっている。それはすでに見た。今は節子に言わなくても、いつか節子に告げる日が来るであろう。それは当然だ。啄木の放埒を知り、節子の忠実を目のあたりにして、言わずにいられぬ日がきっと来る。

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