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2013年1月 4日 (金)

石川啄木伝 東京編 52

 石川正雄は6月23日12時(実際は24日午前0時)ころにはじまる歌の奔流の第1首の明星に送った原稿つまり「石破集」第1首の原稿を次のように推定した。
  石一つ落して聞きぬおもしろし山を撼(ゆ)る谷のとどろき
と。これでは第4句が五音であって、短歌になっていない。石川正雄は推敲跡のはげしく入り乱れた原稿から「一」の字を読み取れなかったのである。決定稿はこうでなくてはならない。
  石一つ落して聞きぬおもしろし一山(いちざん)を撼(ゆ)る谷のとどろき  (ルビは近藤)
 ともあれ、石川正雄は自身の読み取った破調の短歌にもとづいてこう述べた。
  石ひとつの歌は、そのはげしい自棄的な気持をもてあまし、山の上から大きな石をころがし落し、あたりを滅茶滅茶にしながら、深い谷底で爆雷のような轟音をあげて、石そのものが木つ葉みじんになるという、捨鉢な気持を歌つたものと、推量され、石を破るという、途方もない表現は、ここからきたものと考えられよう。
  ……
  かれがこの歌を冒頭に据え「石破集」と題したのは、そこに浮かびあがる複雑多様な感情を歌つた集という意味ではなかつたろうか。

 この歌をただ一人正解に近いところまで読んだ人ならではの卓見である。ついで石川はこうも言う。

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