« 石川啄木伝 東京編 67 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 69 »

2013年2月 6日 (水)

石川啄木伝 東京編 68

 8月21日。
 夜、金田一君と共に浅草に遊ぶ。蓋し同君の嘗て凌雲閣に登り、閣下の伏魔殿の在る所を知りしを以てなり。
 7月5日に金田一から話を聞いていたのだった。興味津々だった。今日はいよいよ”実地調査”というところだ。
 凌雲閣の北、細路紛糾、広大なる迷宮あり、此処に住むものは皆女なり、若き女なり、家々御新燈を掲げ、行人を見て、頻に挑む。或は簾の中より鼠泣するあり、声をかくるあり、最も甚だしきに至つては、路上に客を擁して無理無体に屋内に拉し去る。歩一歩、”チヨイト””様子の好い方””チヨイト、チヨイト、学生さん”"寄つてらつしやいな"
 塔下苑と名づく。蓋しくはこれ地上の仙境なり。

 十時過ぐるまで艶声の間に杖をひきて帰る。
 ずいぶん猥雑で猥褻な界隈である。ここを「地上の仙境」といい、「十時過ぐるまで」徘徊したというのだから、啄木の胸の内もさぞ猥雑で猥褻だったのだろう。

« 石川啄木伝 東京編 67 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 69 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533861/56664841

この記事へのトラックバック一覧です: 石川啄木伝 東京編 68:

« 石川啄木伝 東京編 67 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 69 »