« 石川啄木伝 東京編 75 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 77 »

2013年2月22日 (金)

石川啄木伝 東京編 76

 日記の続きを引こう。
 泣菫の詩人的生活は終つた。有明も亦既に歌ふことの出来ない人になつた。与謝野氏は、こゑの未だ尽きぬうちに、胸の中が虚になつた。今、唯一の詩人は北原君だ。北原の詩で、官能の交錯を盛んに応用した、例の硝子のにほひの詩は、要するにキネオラマに過ぎぬが、此頃毎号心の花に出してゐる”断章”の短い叙情詩に至つては、真の詩だ、真の真の詩だ。心にくき許り気持のよい詩だ。今の詩壇の唯一人は北原だ!
 負け嫌いの啄木にしてはまれに見る手放しの絶賛だ。それでも負け嫌いが現れるのは次の負け惜しみ一行であろう。
 然し北原には恋がない!
 そこでこれから4ヶ月後、啄木はうぶな白秋にとんだ「恋」を教えるだろう。白秋はこの面でも啄木を超え、牢獄につながれることになるであろう。
 ともあれこのころから白秋は短歌において啄木に一歩を譲り、啄木は詩において白秋に一歩を譲ることになるであろう。

« 石川啄木伝 東京編 75 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 77 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533861/56786303

この記事へのトラックバック一覧です: 石川啄木伝 東京編 76:

« 石川啄木伝 東京編 75 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 77 »