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2013年3月26日 (火)

石川啄木伝 東京編 92

 10月2日、節子と妹光子から手紙が届いた。母カツが29日の夜に岩見沢の山本千三郎・とら夫婦の許へ向かったという。口減らしのためであろう。岩見沢へ直通の汽車は一本しかない。函館発午後7時、翌朝7時28分着の便だ。啄木が函館の焼け跡を去った時と同じ池田行きである。年老いたカツには乗り換えなど不可能と判断したのであろう。夜汽車に乗って揺られて行く。
  ……北海の秋の夜汽車の老いたる母が心! 妻は是非東京で奮闘してくれと言つて、人数も少なくなつた事なれば、アト一月や二月郁雨君の厄介になるにも少しは心の荷が軽くなつたと言つて来た。予は泣きたかつた。然し、涙が出なかつた!
  ……
  筑紫から手紙と写真。目のつり上つた、口の大きめな、美しくはない人だ。
  ……
  血笑記を読んで了つて、色々と物思ひに耽つてるうちに夜が更けた。源氏の“野分”の巻を読み乍ら寝た。

 「血笑記」は二葉亭が訳したレオニード・アンドレーエフの小説。この7月易風社から出た。
啄木は血まみれの印象を与える『血笑記』を読んだあと、こんどは源氏物語の野分を読んだ。須磨源氏なら第12帖までだが、野分なら54帖中の28帖を読んだことになる。
 翌日「晶子さんと栗を喰べ乍ら源氏の話などをし」ているが、行幸以降は読まずに古本屋に売ってしまったらしい。

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