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2013年4月16日 (火)

石川啄木伝 東京編 102

 11月1日。この日「鳥影」の連載が始まった。女中が新聞を部屋に入れて行くと、「ハツと目がさめ」る。一葉はスクラップ。一葉は妻へ、一葉は節子の母と妹たちへ送る。日記は続く。
  起きて、また新聞を見乍ら飯を食つた。そして、昨夜与謝野氏から貰つて来た五円を持つて出かけて、足袋や紙や共に、大形の厚い座布団を二枚買つて来た。今迄夏物のうすくなつたのを布いてゐたつたのだ!
 貸本屋から白鳥君の”何処へ”。
 金が無ければ「夏物」を敷いていてもよさそうなものだが、それは啄木にとっては「!」つきのガマンだったのである。どう考えても貧乏育ちの感覚ではない。
 夜、なんといふこともなく心がさびしくて、人の多勢ゐる所へ行きたくなつた。そし て八時頃にふらりと出かけて、四丁目から電車で浅草に行つた。電車の中に、目と鼻が、節子に似た女がゐた。
 日曜だから非常な人出であつた。予は先づ、富士館といふへ入つて、息苦しい程人いきれのする中で活動写真を見た。そこを出て、見世物小屋の前を池の横へ行くと、十四位の美しい衣服をきた半玉が、四辺を恥かし気に見廻し乍ら、十許りの見すぼらしい装をした(妹?)に煮た豆を買つてくれてゐた。予は、一葉の或小説を読んだ時の様な、言ひ難い哀愁の楽みを覚えて、其の二人の後姿を人なだれの中から見た。……

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