« 石川啄木伝 東京編 102 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 104 »

2013年4月18日 (木)

石川啄木伝 東京編 103

 映画館のあと「池の横へ行」ったとはそれだけ塔下苑に近づいたということである 。
 足はいつしか塔下苑に進んだ。…………O-Mitsu-san!…………妙な気持であるいてゐると一人の男が後から来て突当つた。後で気がついたが、此時予は、七十銭を引いて四十銭五厘と実印と入つてゐた財布をすられたのだ。此夜の出来事は、”鳥影”が新聞に出初めたと共に、予にとつて生れて初めての経験であつた。…………
 金を握る→浅草に向かう→映画館に入る→塔下苑に行って女を買う。「ローマ字日記」の終わり頃(09年6月初め)までの7ヶ月間の定番である。
 もっとも「金を握る」の前に「小説が書けない」が入るのだが。
 長い「…………」は女性を買ったことの表現であろう。「O-Mitsu-san」に「!」が付いているのは生まれて初めて買った女性の名であること、その名が妹「みつ(子)」と同じであったことによるのだろう。二つ目の「…………」は不思議な暗合も含めた「妙な気持」の表現と思われる。
 俊敏の権化のような啄木もこの夜はよほどスリに狙われやすい顔をして歩いていたらしい。

« 石川啄木伝 東京編 102 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 104 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533861/57157679

この記事へのトラックバック一覧です: 石川啄木伝 東京編 103:

« 石川啄木伝 東京編 102 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 104 »