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2013年5月18日 (土)

石川啄木伝 東京編 117

 11月22日。この日「(五)の一鳥影のところを」書き、また「”昴”に出すべき”赤痢”を書き出した」。小川家の障子に「鳥(とり)(かげ)」が映ったので、静子が「兄様、今日は屹度お客様よ。」と言い、信吾が「ハハヽヽ。迷信家だね。事によつたら吉野が今日あたり着くかも知れないがね。」と応ずる。
 そして智恵子が来訪し、吉野満太郎(みつたらう)の来訪となる。エレーナならぬ「智恵子」はその名を函館区立弥生尋常小学校での同僚橘智恵子に借りたのであろう。和製インサーロフ吉野満太郎は東京の美術学校を出た画家で信吾の友人である。「吉野は、中背の、色の浅黒い見るからに男らしく引緊つた顔で、……烈しい気性の輝く目は、美術家に特有の、何か不安らしい働きをする」男なのだそうだ(〈五〉の四)。これは啄木得意の自画像であり、「秋風記」の啄木と「病院の窓」の「竹山」の描写を合わせるとこんなところになる。「汝青木松太郎」がインサーロフになれないことは、「連想」で自ら確認しているのに、やはり主人公には自分を書き込まずにはいられないのだ。それにしても「ミツタロウ」と「マツタロウ」は偶然の一字違いではあるまい。
 今の作者そっくりの脳天気な吉野は「職業とてもない、暢気な身上なのだ」(〈六〉の一)。

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