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2013年5月20日 (月)

石川啄木伝 東京編 118

 そして、生活のため中学の絵の教師になり才能を埋もれさせて行く盛岡の友のことを「平凡の悲劇」だと言い、「家庭の事情なんて事がてんでよくない。生活問題は誰にしろ有るさ。然し芸術上の才能はそうはゆかない。そいつが君、戦ってもみないで初めツから生活に降参するなンて、意気地が無いやね」と言うような男である(〈七〉の三)。そのうえかれは「天才」である(〈八〉の三)
 このたび渋民村に何しに来たのか。「田舎にはロマンチックが、……夢が……叙情詩(リリツク)が残つて」いるからだと言う。かれは「苦しくつて、怺(たま)らなくなると何時でも田舎に逃出す」のだそうだ。吉野はインサーロフどころか本質的にはルージンや青木松太郎により近い。
 年末の30日まで全59回だらだら引き延ばされて行くこの小説につきあうのはもうよそう。
 11月30日。
  おそく起きた。
  平山良子から写真と手紙。驚いた。仲々の美人だ!
  スラスラと鳥影(七)の二をかき、それを以て俥で午後三時毎日社へ行つた。そして三十円――最初の原稿料、上京以来初めての収入――を受取り、編輯長に逢ひ、また俥で牛込に北原君をとひ、かりた二円五十銭のうち一円五十銭払ひ、快談して帰つた。宿へ二十円、女中共へ二円。日がくれた。栗原君の新居を訪ふと病床にありと。Victimを返してかへる。
  異様な感じにうたれた。
  九時頃から金田一君と共に四丁目の天宗へ行つてテンプラで飲んだ。大に喋つた。十二時酔うてかへつて寝た。

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