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2013年6月 2日 (日)

石川啄木伝 東京編 124

 伊藤整の自伝小説『若い詩人の肖像』にこんな叙述がある。1923年頃の小樽である。「私」は小樽高等商業学校の学生、「根見子」は恋人の女学生である。二人はこの夏から秋にかけてくり返し「逢う」関係であった。「逢う」場所は野外にいくらでもあった。冬になった。野外は雪に埋もれた。
 私は彼女と何とかして、どこかで逢いたいと思つて相談した。根見子は、蕎麦屋へ行くことを提案した。蕎麦屋というのは、この地方で淫売屋の異名であり、町のある部分には蕎麦屋のノレンをかけた船員相手の淫売屋が何軒も続いていた。でも、そんな家でない本当の蕎麦屋もあるらしい、ということが彼女の話で分つた。
 次の日の午後、私と根見子と、そういう場所から離れた所にある蕎麦屋へ入つた。そこは二階に座敷があり、注文したテンプラ蕎麦を持つて来ると、そのあと店の者は私たちを放つておいてくれた。そして私たちは、時々そこで逢うことができるようになつた。
 
また啄木の10月4日の日記にこんな記述もあった 。
 (本郷)四丁目の藪でまたビールを飲んで蕎麦。例の天プラ屋の娘が淫売だと女中が話したので、金田一君少し顔色が悪かつた。
 「女中」は蕎麦屋の店員であろう。「天プラ屋の娘」の「淫売」は店の(二階などの)部屋でおこなわれたのであろう。

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