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2013年6月 4日 (火)

石川啄木伝 東京編 125

 こうした例を勘案すると、浅草にもそういう「蕎麦屋」があって不思議はないと思われる。吉井勇という浅草の塔下苑の奥まで熟知している先達がいる。そんな「蕎麦屋」を聞ていて啄木が最初から浅草へ誘ったと考えると、日記全文の筋が通る。
 「予の心は陶とした!/唯、陶とした!」(「陶とする」は「うっとりする」)のもそう考えるとよく分かる。
 啄木は「陶とした!」まま小奴と手を取り合い、上野まで歩いてもどり、日本橋行きの電車に乗って、彼女を宿まで送りとどけ、それから蓋平館に戻った。
 その夜は「羽織の紐の鐶を一つ残した程酔つた」と言う。明晰な啄木にしては意味不明のセンテンスである。S字鐶一つを残して、羽織の紐ともう一つのS字鐶をなくしたというのであろうか。銚子二本でそれほどうっとりしていたのか。まさか。
 こうして「ソバ屋」のある時間こそ、二人の「宿願」達成の時だったのであろう。とすれば「ああ、何といふ日であらう!!!」と三つの感嘆符をうったワケもよく分かる。

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