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2013年6月 6日 (木)

石川啄木伝 東京編 126

 翌10月2日。
 (七)の三。
 昼食がすむと、日本橋に坪仁子の宿を訪うた。座にゐたのは大坂炭鉱の逸身豊之輔、函館の奥村某――小奴は予の後に座つてゐた。三時頃異様な感情を抱いて帰つた。
 小奴の旦那はかぞえ年で当年27歳。かぞえ23歳の啄木は精力絶倫の青年実業家に圧倒されたことであろう。しかも小奴をはさんで逸身とはずいぶん生々しい関係にある。「異様な感情を抱いて帰つた」のも不思議はない。
 この日の日記にこうも記す。
  夜、アテにならぬ約にほだされて、殆んど何も手につかなかつた!
  予の心の平和は攪乱された。ああ、予はこの日終日顔が上気してゐた。そして、何となく落付かなかつた。

 「アテにならぬ約」とは、小奴がうまく時間を作れたら、逢いに来るという約束であろう。時間は作れなかったらしい。啄木は一日中顔を「上気」させて待った。「九時頃遂に堪へがたくなつて一人出て、パラダイスで麦酒を一本のんで、赤くなつて来て寝た。」

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