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2013年6月24日 (月)

石川啄木伝 東京編 135

 お由は飲んだくれの厄介者だった。
 二百十日(9月1日ころ)に赤痢患者が発生し、隔離病舎に収容された。遂に全村に蔓延した。1ヶ月もしないうちにお供え水の需要が多くなり信者も11軒になった。松太郎はお供え水を呉れてやる代わりに葡萄酒を買ってこさせることを思いついた。それをお供え水にたらしてやり、残りは自分が飲んだ。
 お常も赤痢で隔離病棟に送られた。その夜お由も赤痢になって烈しい腹痛と下痢が始まった。お由は怒鳴る。「畜生奴! 狐! 噓吐者(うそつき)! 天理坊主! よく聴け、コレア、俺ア赤痢に取付かれたぞ。畜生奴! 噓吐者! 畜生奴! ウン……」
自分の部屋に逃げ込んだ松太郎は布団をかぶって泣く。

 新興宗教天理教の布教と当時猖獗を極めた赤痢との結びつきを小説化しようとした観点は新鮮である。しかし啄木は天理教を研究したわけではない。増田からの耳学問と、「新小説」08年10月~12月号に載った碧天生「天理教の研究」くらいが情報源であったらしい。
 1年数ヶ月後大逆事件が起こるや、日本語で書かれた(つまりすぐに安く買える)無政府主義・社会主義の文献を渉猟読破した啄木と同一人物とは思えない安易さである。

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