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2013年8月12日 (月)

石川啄木伝 東京編 148

 10日の日記。
 今日は誰も来なかつた。半日想をかまへてかの六日のことを書かうとした。十枚も最初の一枚を書き損じて、題を(束縛)とあらためた。そして予は十一時すぐるまでにやつと一枚半かいた。
  束縛! 情誼の束縛! 予は今迄なぜ真に書くことが出来なかつたか!?
  かくて予は決心した。この束縛を破らねばならぬ! 現在の予にとつて最も情誼のあつい人は三人ある。宮崎君、与謝野夫妻、そうして金田一君。――どれをどれとも言ひがたいが、同じ宿にゐるだけに金田一君のことは最も書きにくい。予は決心した。予は先づ情誼の束縛を捨てて紙に向はねばならぬ。予は其第一着手として、予の一生の小説の序として、最も破りがたきものを破らねばならぬ。かくて予は(束縛)に金田一と予との関係を、最も冷やかに、最も鋭利に書かうとした。

 「赤痢」でもまったく自分を告白できなかった啄木は、卑怯にもこれまでもこれからもつまり生涯を通してもっとも恩をうける金田一京助との「関係」を書くのだという。今度も自分は陸(おか)に上がるのだから暴露の被害を受けるのは金田一に決まっている。

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