« 石川啄木伝 東京編 150 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 152 »

2013年8月18日 (日)

石川啄木伝 東京編 151

 この夜白秋と別れ、電車で一緒に来た杢太郎とも別れて、10時頃に春日町で一人になった。蓋平館に向かわずに、こんな夜遅くに浅草に向かう。杢太郎や白秋と楽しく過ごした日の終わりになぜ下宿にかえらなかったのであろうか。
 一人になったとき言いしれぬ悲しみと寂しさがかれを襲ったのであろう。
 杢太郎はかれ自身の理念を貫いて戯曲「南蛮寺門前」を仕上げた。かれは着実に自分の道を歩んいる。白秋には先月敗北宣言したばかりだ。かれの第一詩集「邪宗門」は絢爛たるものになりそうだが、その出版も間近だ。小説に賭けていながら一編の会心作すら書けないでいる自分とはなんたる違いぞ。
 いや甘ったれの啄木は小説を書けないのを、自分のせいにはしない。境遇のせいにする。杢太郎も白秋も家が豊かで仕送りも十分だ。それに引き替え自分は仕送りを受けるどころか自分が稼いで養うべき家族が三人もいる。ああ、自分の「最も深い弱み」は「結婚したつてこと」だ。だから太田や北原に負けているのだ。こう考えるから、悲しくなる。寂しい。人がたくさんいる蓋平館には帰りたくない。この悲しさ寂しさは「束縛」の金田一君にも打ち明けられない。部屋で一人っきりになったら寂しさに耐えられないような気がする。幸いなにがしかの金が懐にある。そうだあの街へ行こう!
 かくて、Masaという女性を買う。

« 石川啄木伝 東京編 150 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 152 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533861/57989971

この記事へのトラックバック一覧です: 石川啄木伝 東京編 151:

« 石川啄木伝 東京編 150 | トップページ | 石川啄木伝 東京編 152 »