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2013年9月14日 (土)

石川啄木伝 東京編 164

 あの「鳥影」が本になると思うのは『あこがれ』がドンと売れると思い込もうとした時と同様、都合の悪い事態を直視しない啄木の悲しい弱さである。
 ご馳走になって7時に白秋宅を辞して「マツスグに浅草へ」。
 活動写真はおもしろかつた、」それから、  そして十一時頃かへつた。
 下宿料が払えないのに、「鳥影」が本になると自らを欺きつつ思い込み、さらにそれで金が入ると妄想を進め、金が入るのだから「浅草へ」、となる。
 『あこがれ』のころから4年、ずいぶん社会経験も積んだのに、精神構造は何も変わっていない。
 それでも間もなく家族が上京する。いくら無責任の権化とは言え、定収入なしに家族を迎える事はできない。そもそもが去年の4月段階で「二三ケ月の間」に家族を迎えるとの約束だったのだ。それがそろそろ1年だ。
 2月3日「朝日新聞の佐藤北江氏へ手紙と履歴書スバル一部おくる」。ようやく就職することを少し本気に考えたらしい。
 2月4日北原がはがきをくれた。鈴木鼓村が「鳥影」の出版先を世話を快諾してくれたと、その上新聞小説の口もさがしてくれることになったと。鼓村は白秋の話を聞いて「快諾」したのであって、「鳥影」を読んだ上での「快諾」ではあるまい。
 しかしこの手紙に啄木の妄想はふくれあがったらしい。「神経衰弱にかゝつた時の様な気持で、何も書く気になれず、いろいろな空想許り浮んだ。

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