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2013年10月 6日 (日)

石川啄木伝 東京編 175

 

佐藤氏に面会し二三氏に紹介される、広い広い編輯局に沢山の人がゐる、一団づゝ、方々に卓子と椅子がある、そして四方で電話をかける声がしつきりなしに広い室内に溢れる、――つかれた、無理に張上げた声だ、――その中で予は木村といふ爺さんと並んで校正をやるのだ。校正長の加藤といふ人が来た、目の玉が妙に動く人だ、――校正は予を合せて五人、四人は四人ともモウ相応の年をした爺さんで、一人は耳が少し遠い、合間合間(2つ目の「合間」=くの字の踊り字)に漢詩の本を出して読んでゐた、モ一人の経済の方の校正は俺はモリ(ソバ)なんか喰はぬと言つてゐた。
 社会部の主任渋川玄耳といふ人は、髯のない青い顔に眼鏡をかけてゐた、
 五時頃初版の校正がすんで、帰つてもよいといふ、電車で帰つた、

 佐藤の親切が、発展中の大新聞社の活気が伝わってくる。佐藤は以後啄木の庇護者となる。どれほどかばってくれ、面倒を見てくれることか。
 校正係の人々を「爺さん」と呼んで馬鹿にしているが、これからずいぶん迷惑をかけ、助けてもらい、「木村といふ爺さん」からは金を借りたりもする(ただし利子付で)。
 玄耳渋川柳次郎は国民作家夏目漱石の朝日入社に際して、弓削田精一とともに重要な役割を果たしたが、一年後に国民詩人石川啄木を見出して伯楽にもなった。
 朝日新聞入社は啄木の生涯おける最大の事件の一つである。

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