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2014年1月 8日 (水)

石川啄木伝 東京編 221

 しかし、家族上京のための具体的段取りが問題となり、それに対応せねばならなくなると「死にたくな」るのだ。「書けない」という事実がささやきかけてくる恐ろしい結論を何としても封じ込めようとして、必死の形相で抵抗している啄木には、事ここに至っても家族を迎える精神的余裕はない。かれが闘っているのが幻想上の敵、錯覚にもとづく敵であったとしても、当の啄木にとっては、自分の生存理由の根幹を断ち切ろうとして迫ってくる最強最大の敵なのである。家族3人を自分にしがみつかせてどうして闘いを続行しえようか。こう感ずるから「死にたくなった」と記すのだ。そして、
  Yo wa Sakuya no Tsuzuki ―― ‘ Hana no Oboroyo ’ wo utsushite, Sha wo yasunda.
 夜金田一が励ましに来てくれる。あらん限りの馬鹿まねをして金田一を部屋にかえした。
 Soshite sugu Pen wo totta.  30pun sugita.  Yo wa Yo ga totei Shosetsu wo kakenu Koto wo mata Majime ni kangae neba naranakatta. Yo no Mirai ni Nan no Kibo no nai koto wo kangaeneba naranakatta.
 とうとう呼び出してしまった、「小説を書けぬ自分」という正体を。「ローマ字日記」全体で正体をこんなにあからさまに呼び出すのはここだけである。この正体を直視するか。しない。

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