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2014年1月12日 (日)

石川啄木伝 東京編 223

 4月17日
 10時ころ並木武雄に起こされる。ズーンと深い不快感を感じる。かれの時計を入質してあるのだ。請け出して返すべき当の相手がきたわけである。4月7日に5円しかなく、その後も「やめろ、やめろ」という心の声を聞きつつ、あるいは「馬鹿な」と思いつつ、また日常の用に迫られて、出費した。きのうは宮崎への手紙に同封して母に1円送った。8円を返すアテなどどこにある。
 今日の悩みは家族上京のことではなく、金のことではじまった。社を休んで、「赤墨汁(インク)」 というのを書こうとする。自分が自殺することを書くのだ。ノートに3枚ほど書いた。
   …… soshite kakenaku natta !
   Naze kakenu ka ?  Yo wa totei Yo-jisin wo Kakukan
(客観) suru koto ga dekinai noda.  Ina.  To-ni-kaku Yo wa kakenai ――
 今日も「書けぬ」ことを痛感するとともに、なぜ書けぬかをうっかり考えそうになる。「予はとうてい予自身を客観することができない」からだと思う。自身を客観することがなぜできないのか。客観すべき自己自身の核心は何か。それは分かっている。「連想」「赤痢」「足跡」でそれなりに触れようとした、避けようとした。いや去年4月22日大島経男宛書簡を書いた時すでに分かっていた。避け続けて来たのだ。昨夜うっかりそれを書いたために狂気を発したのだった。「否、とにかく予は書けない」と考えることを打ち切る。

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