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2014年3月14日 (金)

石川啄木伝 東京編 253

 5月8日――13日
  Kono muika-kan Yo wa nani wo shita ka ?  Kono koto wa tsui ni ikura asette mo Genzai wo buchi-kowasu koto no dekinu wo Shomei shita ni suginu.
 現在をぶちこわすために何をしていたのか。書いていた。おそらくひたすら書く闘いをつづけていた。2人の少年たちの所へ行って「一握の砂」を書き続けた。そしてペンは「その後一年!………………」で止まってしまう。「その後一年」とは今、現在のことだ。
 それから「札幌」というのを書いた。50枚ばかり(二百字詰め原稿用紙)書いたが13日現在でまだまとまらぬ、という。「いくらあせっても、現在をぶちこわ」せぬことが分かったというのだから、「札幌」もまた失敗に終わったのだ。
岩本らのところに行ってみると下宿料の催促に弱っている。社の校正係主任加藤四郎から出社するよう言ってくるが、仮病の届けを出し、その上、岩本を使いにやって加藤を通じ、佐藤北江から5円借りてもらう。なんという甘ったれ社員だ。だがその金は岩本らに与えて下宿代を肩代わりしてやるためのものだ。
 自身もこうじはてて、白秋から送られた『邪宗門』を売ってしまう。
 が50枚もの原稿紙にペンを走らせてもついにまとまらなかったのであれば、そしてここ1年間の悪戦苦闘さらにここひと月の、信じがたいほどにねばり強い、くりかえして、くりかえして、くりかえした創作への挑戦を考えてみれば、さすがの啄木も地べたにたたきつけられて起き上がれぬ思いであった。その上、苦境をもたらしている諸条件は悪化の一途をたどっている。

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