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2014年9月14日 (日)

石川啄木伝 東京編 269

 「ローマ字日記」を経た啄木にはもはや「脂汗流して、地獄這いずり廻(まわ)」る余力は無い。この76日間でそれはやり終えた。今後の啄木の行方を見る前に、6月16日の現実にもどろう。
 この日朝、啄木と金田一と岩本は上野駅のプラットホームに宮崎郁雨・母・節子・京子を迎えたのだった。
  
 それよりさらに9日前、節子ら4人は函館を発って、比羅夫丸の船上にあった。比羅夫丸は去年就航したばかりの、最初の青函連絡船である。
 この時を詠んだと推定される郁雨の歌がある。
  年わかき水夫は君とわがために語りつづけき海のはなしを
 「君」はもちろん節子。
  嘆きつつ君とわが立つただ下のキヤビンにありし呪ひの女
 「キヤビン」は船室。郁雨が付き添う旅だからいい船室だったのだろう。そこにいる「呪ひの女」はカツであろう。親友の母を「呪ひの女」とは! カツの「呪ひ」の対象は郁雨・節子の恋だというのであろうか。
  その恋と君をのせける船はなほ津軽の瀬戸を往来すれども
 「往来」はゆききと読むのであろう。
  人住まぬ国に行くべき船ならばうれしからむと嘆きたまひぬ
 夫のもとには行きたくない。あなたと二人だけで暮らせる国に行けるものならば、と節子は嘆く。去年8月27日に手紙を書いた時点と今では二人の関係は次元を異にしている。

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