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2014年9月18日 (木)

石川啄木伝 東京編 271

 郁雨は節子と関係ができてからは、釧路時代から始まる啄木の「放蕩」を節子にあらいざらいしゃべってしまったと思われる。啄木の郁雨宛書簡に特徴的な開放的な内容も、並木武雄らから聞いたここ1年間の生活ぶりも、もちろん浅草の私娼窟通いも。これは節子の背反を強力に助長したことであろう。そして郁雨への愛を強めたであろう。
 郁雨は何日か啄木家に泊まって、帰宅の途についた。途中盛岡によって節子の妹ふきとの縁談を進めた。 
 節子の愛は啄木から郁雨へ完全に移っている。啄木は3人の重荷が「Tsui ni !」同居することになって、”作家生活”の障害だ、と思っている。夫婦間の齟齬は深刻である。そして嫁姑の関係はいっそう深刻であった 。
 6月19日実家の母に出した節子の手紙である。
  東京はいやだ。さびしかるべき夜汽車も兄さんがいらしたので色々お話して夜を明しました海岸線、水戸から先きに故障が出来て小山の方へ廻った為め上野についた時は七時半頃でした、……ほんとうに家に居る時は勝手ばかりしてねーしかし兄さんもたいそう満足して居らっしゃいましたからねー私は深く深く感謝致します……表記の処に参りました理髪所の二階ですが六畳二間でたいそうよい処です家賃は六円ですと。…… くわしくは次便
 冒頭の「東京はいやだ。」はいかにも節子の思いの出た強い筆跡で書かれている。「東京」とはこの場合つづめてしまえば夫啄木のことだ 。「いや」な東京と対照して浮かび出たのが「兄さん」だ。

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